占星術には文明史と同じくらいの長い長い歴史があります。
その変遷と広がりを、西洋占星術を中心にまとめました。
占星術と天文学
古代、占星術と天文学はひとつのものでした。
天に輝く星と星を結んで星座を作ったのは、初期メソポタミア文明のシュメール人が初めと言われています。
占星術の起源は、その後のメソポタミア文明(バビロニア期・紀元前2000~1000年頃)と言われており、星の動きを精密に観測することによって、暦の発明や方角・時間の把握、天災の予測や農業の発展に生かされました。
また、王家の人々にとっては政治や国、王の命運を占うためにも使われたのです。
紀元前7世紀頃には、現在のような黄道(太陽の通り道)に沿った星座が定められ、黄道12星座の原型ができあがりました。
世界に広がった占星術
星の動きや暦を使った占術は次第に世界中で起こり、欧州にはバビロニアの占星術の原型がギリシャ・ローマを通じて伝わり、西洋占星術として発展します。
ギリシャ紀元前5世紀の「医学の祖」であるヒポクラテスは占星術の知識も重んじていました。科学や医学の知識の一部として、占星術を用いたのです。
アジアでは、インド占星術(ヴェーダ)、中国の陰陽五行説などが生まれました。
日本にも主に中国を通して天文学や占星術は伝わり、キトラ古墳の天文図、宿曜道や密教など、星と深い関係のある神社やお寺などが存在します。
洋の東西を問わず、いにしえの人々は宇宙と地上の密接なつながりを感じていました。
占星術は政治や国家、科学や医学とも深く関わりました。
天文学との分離
中世ヨーロッパ~ルネッサンス期では、科学的な批判などが起こることもありながら、主に王家との深い結びつきのなかで、医療占星術として発展した側面があります。
16世紀にはポーランドで聖職者・天文学者のコペルニクスが地動説を唱え、天文学者のガリレオがそれを認め、宗教裁判にかけられました。
17・18世紀に入ると自然科学の基礎が発達し、西洋占星術は天文学と大きく分かれることとなります。医学や特権階級とは距離を取り、次第に一般大衆、個人へと対象をシフトしていきます。
近・現代の占星術
そんな中でも、地道に研究を続けていった人々により19世紀末ごろ神智学(物質から精神へ)と結びついて、ふたたび占星術が見直され始めます。
近代占星学の父とも言われるアラン・レオは西洋占星術を体系化しました。
シュタイナーは人智学を提唱し、宇宙と人間の霊性や農業などを結び付けました。これはやがて、バイオダイナミック農法やシュタイナー教育などに発展します。
20世紀に入りニューエイジ的な流れとともに、西洋占星術も様々に発展します。
C・G・ユングは心理学の一環として占星術を研究し、天体の動きと人々の行動や心理の関係について分析しました。
その流れを汲んで、今日までの心理学的なアプローチを含む現代占星術(心理占星術)が発展しました。
これからの占星術
時代背景や自然科学の発達とともに、占星術は天文学と袂を分かちました。
しかしながら、人々の心には残り続け、やがて哲学や心理学と結びついていくことになりました。
また、伝統的な占星術がまったくなくなってしまったわけではなく、伝統と現代を融合させた考えの流派もあります。
人類が歩んできた歴史の分だけ、占星術も多様に進化しているのですね。
そして、風と光の時代、これから占星術はますます様々な視点や解釈がなされていくでしょう。
ホロスコープを読むひとりひとりに、その人だけのオリジナルな占星術が生まれるかもしれません。
でも、いつの時代でも変わらないのは、天の星を見あげ、ただただその美しさに心を奪われる・・・それこそが占星術の原点だと思うのです。
私たちはこのおおいなる宇宙のたったひとつの星「地球」に住む小さな存在の人間。
でも、しっかりと宇宙のなかに包まれているのです。
私たちは、宇宙の一部なのです。
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